「8個入り600円」のたこ焼きを売っていた茶屋が1億円以上も脱税していたというから驚きだ。大阪城公園内で茶屋を経営する女店主(72)=大阪市西成区=が7月、所得税法違反罪で摘発された。
背景にあるのは抜群の立地と訪日外国人の急増だ。茶屋は大阪城の本丸に出入りできる門の目の前にあり、商売敵の露店がいない“独壇場”で、外国人観光客が殺到し、年商2億円超。
かつては花見シーズンくらいしか客が来ず、「納税しなければならないという意識がなかった」(関係者)というが、巨額脱税は悪質と判断され、捜査当局は刑事訴追に踏み切った。
今年7月、大阪城公園の天守閣に通じる桜門の前にある「宮本茶屋」は、大勢の外国人観光客でにぎわっていた。たこ焼き、フランクフルト、かき氷…。観光客はお目当ての食べ物を買い求め、大阪城の観光を満喫しているようだった。だがこの後、店は脱税事件で摘発された。
起訴状などによると、同店を経営する女店主は、平成28年までの3年間で約5億8千万円を売り上げ、
約3億3千万円の所得があったのに、確定申告をせずに約1億3千万円を脱税したとされる。大阪国税局が所得税法違反罪で店主を大阪地検特捜部に告発し、特捜部が同罪で在宅起訴した。
同店が販売していたのは、たこ焼き8個入り600円▽ソフトクリーム400円▽うどん500円▽ラーメン700円-など。これで1億円超もの脱税をしたとされ、販売数がいかに多かったかが分かる。
最大の要因は訪日外国人の増加だ。近年、大阪城を訪れる外国人観光客は増え続けており、大阪市によると、年間入館者数は3年連続で最高記録を更新し、29年度は約275万4千人となった。
その恩恵を受ける形で、同店でも3~4年前から客が急増。関係者によると、客の8~9割は外国人で、売り上げは26年が約1億3千万円、27年が2億1千万円、28年が2億4千万円と、右肩上がりに増えていったという。
同店関係者は「この3年で客が一気に多くなったが、それまでは花見の季節以外はほとんど客はいなかった」と打ち明けた。
大繁盛の要因は、その立地にもある。大阪城の本丸に出入りできるのは、北側の極楽橋か南側の桜門の2カ所だけだが、同店は桜門の目の前に店を構える。
本丸内には昨年秋、飲食店や土産屋が入居する複合商業施設「ミライザ大阪城」がオープンしたものの、宮本茶屋の近くに他に露店はなく、ライバルのいない独壇場だった。
しかも、同店は公園内にある「豊国(ほうこく)神社」から土地を無償で借りて営業を続けていた。商売をする上ではこれ以上ない条件がそろっていた。店主の代理人弁護士によると、同店はもともと、店主の夫が昭和50年ごろに同じ場所で露店を始めたのがきっかけ。
当時から地代は無償だった。店主や夫を知る女性によると、開業当初も羽振りは良かったようで、地元では夫が売上金の大量の札が入った袋を抱えて闊歩(かっぽ)する姿がみられたという。
「1日で100万円以上稼いだ」
女性は、店主がこう話していたのを聞いたことがある。代理人弁護士によると、夫は11年前に亡くなり、その後は店主が経営を継いだ。最近は高齢ということもあって家族が交代で店番をし、アルバイトも5、6人雇っていた。
女性は店主について、「高級車に乗ったりブランド品を着たりすることはなく、そこまで派手な生活をしているようには見えなかった」と印象を語る。
ただ、「家にいないな、と思ったらハワイや国内の温泉に旅行に出掛けたりしていた」とも。店主は、「納税しなければならないという意識がなかった」(代理人弁護士)といい、同店関係者によると摘発後は「ちゃんとすべきだった」と猛省しているという。
だがツケは大きく、在宅起訴されたうえ、店は無期限の営業停止となった。同店に場所を提供していた豊国神社によると、摘発を受けて神社関係者や弁護士らで協議した結果、「閉店すべきだという声が多かった」(関係者)といい、店側に営業自粛を求めることを決めた。
また、大阪市の吉村洋文市長も「店は多くの観光客が利用する。改善に向けた報告書の提出を求める」と要求。「(民有地だから)そんなもん知ったこっちゃないってことなら、黙っているわけにはいかない」と強い言葉でくぎを刺した。
店は8月1日から営業していない。シャッターが閉じられ、外国人観光客でにぎわっていた様子は見る影もない。代理人弁護士によると、営業再開をするかどうかも含めて今後の予定は決まっていないという。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180822-00000500-san-soci
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