米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐり、政府が県による埋め立て承認撤回に対する対抗措置に動いた。
9月の知事選後にかすかに漂った対話の空気はかき消され、政府と県の対決ムードが一気に再燃。攻防は再び法廷闘争に発展する可能性がある。
◇「なぜ選挙戦中」
「本日、行政不服審査法に基づいて国土交通相に審査請求と執行停止の申し立てを行った。今後、法に従って手続きがなされる」。菅義偉官房長官は17日の記者会見で、沖縄県への対抗措置を取ったことを淡々と説明した。
県側には想定外のタイミングだった。9月末の県知事選で移設反対派の玉城デニー氏が過去最高得票で初当選。玉城知事は今月12日、安倍晋三首相と初会談し、協議を要請した。
対抗措置は早くとも21日の那覇市長選後との見方が大勢だった。県幹部は「なぜ選挙中に…」と驚きを隠さない。
政府が手続きを急いだ背景には、移設が暗礁に乗り上げかねないとの懸念があるとみられる。県は故翁長雄志前知事の遺志に従って8月末に承認を撤回。しかし、政府は知事選への影響を懸念し、対抗措置を先送りしてきた。この間、移設に緊急性があるとの政府の主張は徐々に根拠を失った。
菅長官は会見で、対抗措置まで1カ月半を要した理由について「慎重に精査した結果だ」と語った。しかし、2015年に翁長氏が埋め立て承認を取り消した際は、わずか1日で対抗措置に打って出ており、説得力は乏しい。
◇身内が身内を
もう一つの想定外は、政府が行政不服審査制度を使ったことだ。同制度の申立先は裁判所ではなく国土交通省。政府は15年の承認取り消し時に同制度を利用した際、「身内による身内の審査」と批判を浴びた経緯があった。関係者の間では今回、裁判手続きを当然視する声が強かった。
政府はかねて「裁判には確実に勝てる」(高官)と自信を見せていたが、県の撤回から時間を要したことも踏まえ、政府のコントロールが及ばない裁判を避けたとみられる。岩屋毅防衛相は記者団に、手続きの「迅速」さを考慮したと説明。政府高官は「国交省の方が確実だ」と語った。
◇「あまりに強権的」
協議の申し入れを一蹴された形となった県は猛反発した。玉城氏は記者団に、首相との12日の面会に触れ、「そのわずか5日後に対抗措置を講じた国の姿勢は民意を踏みにじるもので、到底認められない。あまりに強権的だ」と述べ、珍しく厳しい口調で政府を批判した。
玉城氏は政府が選んだ行政不服審査制度について「私人の権利利益の救済が目的。国が用いるのは違法で、法治国家においてあるまじき行為だ」と指弾。この後、街頭演説し「役所が役所に助けてくれというのは自作自演だ。本当に情けない」と切り捨てた。
玉城氏は、引き続き協議を求めていく考えだが、「いずれ法廷闘争になる」(沖縄防衛局関係者)との見方が強い。政府と県が互いに提訴し合い、最高裁までもつれ込んだ15~16年の法廷闘争の再現が予想される。「まずは国の出方を見極める」。玉城氏を支える県政与党幹部は気を引き締めた。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181020-00000027-jij-pol
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