米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設を阻むため、沖縄県の翁長雄志知事が移設先の埋め立て承認を撤回する手続きに入った。
承認撤回は翁長氏にとって「最後のカード」。政府は法的手段を講じて撤回の効力を失わせる構えで、11月の知事選に向けて攻防が激化しそうだ。
◇決断迫られる
「全責任は自分にある。自分の決断でやっていく」。翁長氏は27日、県庁の一室に県政与党の県議を集め、撤回の決断を伝えた。この後の記者会見では、膵臓(すいぞう)がんでやせた体から絞り出すように「政府の姿勢は到底容認できない」と語気を強めた。
翁長氏と政府が、埋め立て承認をめぐって対立するのは初めてではない。翁長氏は2015年10月、仲井真弘多前知事による埋め立て承認の「取り消し」を決定。激しい法廷闘争が展開され、取り消しを違法とした最高裁の判断を受けて、ようやく工事が再開された経緯がある。
承認時の瑕疵(かし)を理由とする「取り消し」に対し、「撤回」は承認後に生じた事情を理由に効力を失わせる手続きだ。辺野古移設反対派は16年12月に法廷闘争に敗れると、翁長氏に撤回を要求。翁長氏は「必ずやる」と約束しつつ、タイミングは慎重に探ると説明してきた。
しかし、判断を先送りする翁長氏に対し、反対派の間では「政府による損害賠償請求を恐れているのではないか」といぶかる声が徐々に強まった。6月中旬、政府が土砂投入の8月17日開始を県に通告すると、いら立った反対派が知事室前に連日押しかけ、座り込みなどで決断を迫るようになっていた。
27日の会見で判断の遅れを指摘された翁長氏は「法的観点からの検討を丁寧に行うことが重要だった」と説明した。翁長氏は8月17日より前に撤回に踏み切り、土砂投入を阻止する構えだ。
◇既成事実化狙う
「大したことはない。台風が来て工事を少し中断せざるを得なくなるようなものだ」。政府高官の一人は撤回手続き入りをこう受け流した。別の一人も「工事再開まで長くはかからない。全部シミュレーションしている」と言い切った。
政府は翁長氏が撤回に踏み切り次第、直ちに撤回の執行停止を裁判所に申し立てる。予想される裁判所の審理期間は数週間ほど。「取り消し」をめぐる法廷闘争で最高裁が国に軍配を上げたこともあり、政府関係者は今回も同じと言わんばかりに余裕の表情を見せる。
政府は11月18日投開票の知事選をにらみ、裁判で撤回を無力化できれば直ちに土砂を投入する考えだ。辺野古移設を既成事実化することで、県民の間に「反対しても意味がない」という諦めムードを醸成し、知事選を有利に運びたいとの思惑がある。
知事選について自民党沖縄県連は既に、宜野湾市の佐喜真淳市長に出馬を要請。佐喜真氏は30日に要請受諾を予定するなど、着々と準備が進んでいる。一方、4月にがんの切除手術を受け、抗がん剤治療を続けている翁長氏は、出馬するかどうかを明確にしていない。
執行停止の審理に続く訴訟は知事選後までもつれ込む見通しで、翁長氏周辺では、撤回手続き入りを受けて「翁長氏の不出馬はなくなった」との見方も出ている。
翁長氏は27日の会見で、知事選への対応を問われ、「一日一日」と言葉を濁したが、「辺野古に新基地は造らせないという公約の実現に向け、全力で取り組んでいく」とも語った。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180728-00000032-jij-pol
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