「5年半で経済は11.8%成長し、昨年は過去最高を記録した。雇用では正社員が78万人増えた」
8月26日、自民党総裁選への立候補を表明した安倍晋三首相(63)は鹿児島市での党会合で経済政策「アベノミクス」の成果を強調した。
2012年12月の第2次安倍内閣発足から5年8カ月。アベノミクスの恩恵が地方に十分届いていないという批判を意識し、首相は8月下旬から地方行脚を精力的にこなす。
旧民主党から政権を奪還した首相は「経済最優先」を打ち出し、憲法改正など保守色の濃い政策をひとまず抑えた。アベノミクスの柱である大胆な金融緩和と財政出動を金融市場は好感し、政権発足前に1ドル=80円程度だった為替相場は、
15年には120円超まで円安が進行。好調な世界経済も追い風に、大手企業の業績は大幅に改善した。日経平均株価は現在、発足時の2倍を超える水準だ。学生の就職環境もよくなり、若い世代の安倍内閣支持率は高い。
一方で、政府が掲げる「経済再生と財政健全化の両立」の道筋は見えない。国の借金の国債残高は18年度末時点で883兆円に上り、12年度末から200兆円近く増加した。
その大きな要因は、当初15年10月を予定していた消費税率10%への引き上げを政府が2回延期したことだ。14年4月の8%への増税で景気が冷え込んだため、首相は任期中のさらなる引き上げをためらった。
旧民主党政権の12年6月、自公両党を加えた3党は税率10%で合意した。高齢化で医療、年金などの費用が膨らむ中、社会保障制度を維持する増税の必要性を与野党で共有し、
世論の理解を促す狙いがあった。それだけに、自民党の閣僚経験者は「『消費税を政争の具にしない』という重い政治判断を安倍政権は簡単にほごにした」と憤る。
首相は昨年10月の衆院選で、税率2%分の増収(5兆円強)の半分を教育無償化などに充てる新たな方針を表明した。
使途変更などによって基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化目標時期は20年度から25年度にずれ込む。唐突ともいえる軌道修正は、19年10月に予定する税率10%が政権の逆風になることへの警戒感の表れだ。
政権公約だった「脱デフレ」も実現のめどがたたない。首相は政権発足から間もなく、日銀と二人三脚で2%の物価上昇を目指すと明記した共同声明を発表。13年3月に就任した黒田東彦日銀総裁は、過去に例のない「異次元緩和」によって2年で目標を達成する考えを示した。
金融緩和は円安・株高で企業業績をV字回復させたものの、賃上げが消費を喚起し物価が上昇するという経済の好循環は起こっていない。物価上昇目標の達成は見通せず、金融緩和の出口は不透明な状況だ。
総裁選に立候補する石破茂元幹事長(61)は「異次元緩和によるカンフル剤の効果がいつまでも続くわけではない。都合のいい数字ばかりが強調されるのは決してよいことだと思わない」と批判を強めている。【大久保渉】
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7日告示の自民党総裁選では安倍政権5年8カ月の評価が問われる。総裁選の論点と争点を見ていく。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180903-00000064-mai-pol
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