夏休み明け前後に子どもの自殺が急増する。「9月1日問題」「夏休み明け自殺」などとも呼ばれ、社会問題と認識されるようになった。「勉強がつらい」「友人関係が不安」「先生に会いたくない」……。
新学期が近づくことをストレスに感じ、追いつめられてしまう子どもたち。最悪の事態を防ぐにはどうすればいいのだろうか。日本自殺予防学会理事で、未成年の自殺予防に取り組んでいる筑波大の太刀川弘和准教授に聞いた。(聞き手・メディア局編集部 鈴木幸大)
8月下旬~9月上旬が危険
自殺総合対策推進センターは今年8月、2006年度から15年度までの10年間に自殺した小・中・高校の児童生徒3209人の死亡時期について、8月下旬が153人と最も多く、9月上旬122人、4月中旬108人と続くと発表しました。
「夏休み明け自殺」の認識が広がったのは、内閣府が「自殺対策白書」を発表した2015年です。これによると、1972~2013年の18歳以下の自殺者数について、多くの地域で9月1日前後が最多だったとし、「休み明け直後は大きなプレッシャーや精神的動揺が生じやすい」と指摘しています。
「夏休み明け」はストレス
自殺の多くは、解決すべき課題を抱え、それがストレスで憂うつな気分になり、行動に移すというプロセスで起こります。「勉強したくない」
「嫌いな先生がいる」
「いじめっ子に会いたくない」
子どもたちは、新学期を迎えるにあたって、こんなふうにさまざまな不安や課題を抱え、気持ちを切り替えたり、心の準備をしたりします。夏休みでしばらくストレスのなかった弛緩(しかん)した状態から、ストレスを抱える時期に入る境目は特にプレッシャーがかかります。
だから、「夏休み明け」前後のこの時期、生活スタイルに大きな変化を迎える子どもたちが落ち込んだり、ふさぎ込んだりするのは、当たり前の反応とも言えます。
どこにも居場所がない
アメリカの心理学者トーマス・ジョイナーは、自殺行動を起こすための三つの条件を指摘しています。〈1〉自分は世界で1人で、だれも自分のことを気にしていないという認識
〈2〉他人にとって自分の存在は負担であり、死んだほうがましだという思考
〈3〉自殺をするための力・衝動
つまり、自分はどこにも居場所がないという「自己所属感の脆弱(ぜいじゃく)」、自分が周囲に迷惑をかけているという「自己負担感の知覚」の二つがあると、
自らの存在を否定し、「死にたい」という気持ちになります。これに加え、自殺をする手段や方法といった情報収集能力、自らを駆り立てる体力も必要です。
子どもたちは、若さゆえに完全主義に陥りやすい傾向もあります。だから、何かに行き詰まったら、「もうどうにもならない」「やってられない」などと思い込み、衝動的に自殺へ走ってしまうこともあります。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180902-00010000-yomonline-life
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