同じ部署で派遣社員が働くことができる期間を一律3年と定めた改正労働者派遣法の施行から30日で3年を迎えるのを前に、派遣先から雇用継続を断られたり、雇い止めされる不安を訴えたりする悩みや相談が相次いでいることが分かった。今後「派遣切り」の増加も予想されることから、法の欠陥を指摘する声が出ている。
学者や弁護士らが集まった「非正規労働者の権利実現全国会議」には、7月ぐらいから悩みや相談が相次ぎ、今月20日現在、計309件に上っている。
「3年間同じ企業で働いていれば正社員になれると勝手に思っていた。一体誰のための法改正なのでしょうか」。営業で働く男性(48)は同会議にこう打ち明けた。
男性は派遣で働く企業から、3年の経過を前にした10月末で「契約終了」すると連絡を受けた。「強く言えない立場なので、次の派遣先の紹介を待つしかない」と諦めたという。
改正法の趣旨について、厚生労働省は「派遣労働者のキャリアアップや直接雇用の推進を図り、雇用の安定と処遇の改善を目指す」と説明。派遣労働者を直接雇用した場合に1人当たり最大72万円を支給する助成金も用意。
今年度予算で921億円を組んだ。だが、同会議の小野順子弁護士は「法改正で派遣労働者が次々と切られている実態がある。改正前より身分が不安定になり、雇用安定に全然つながっていない」と指摘する。
平成27年9月30日施行の改正法の前までは、秘書や翻訳など26業務について、派遣社員は同じ部署で期間制限なく働くことができた。
施行後は、同じ部署で派遣社員が働くことができる期間は一律3年となり、3年を経過すれば、労働組合の意見聴取を経た上で、別の部署で働くか、派遣先での直接雇用の道がある。派遣元の会社は派遣先の同じ部署で別の労働者を派遣することもできる。
しかし、直接雇用の「壁」は高い。同会議の調べによると、直接雇用する場合、派遣元の会社が派遣先に対し、派遣労働者の年収の30%を「紹介料」として支払いを求めるケースが多いという。
村田浩治弁護士は「派遣先は『そこまではできません』となって、直接雇用が阻まれている。紹介料は法の趣旨に沿わず、そのような取り決めは無効であるとして、訴訟で争うこともできる」と話した。
【用語解説】非正規雇用の問題
平成20年のリーマン・ショック後、派遣労働者の解雇や雇い止めなど「派遣切り」が相次ぎ、職や住まいを失った人が年を越すために集まった「年越し派遣村」ができるなど社会問題化した。雇用の安定を目指し、25年4月に施行された改正労働契約法では今年4月から、
5年以上働く有期労働者が、期間の定めのない無期雇用に転換できるルールが適用。27年9月の改正労働者派遣法では、
3年以上働く派遣労働者が同じ部署で働く場合、直接雇用されるよう促した。総務省によると、非正規労働者は29年、約2133万人で過去最多を更新した。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180922-00000551-san-bus_all
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