【フロリアノポリス=ブラジル南部=時事】国際捕鯨委員会(IWC)総会で、商業捕鯨再開を目指す日本の提案がオーストラリアなど反捕鯨国の強い反対に遭い否決された。
30年以上捕鯨再開を求め、拒否され続けた日本。不満を強める国内関係者からはIWC脱退の声が相次ぐ。ただ、脱退は逆に捕鯨再開の道を閉ざしかねないもろ刃の剣。日本は将来の道筋を描けず、八方ふさがりの状態に陥った。
◇「背水の陣」の代表団
「今回で駄目なら、脱退も視野にIWCへの分担金の拠出停止を国会に諮る」。日本提案の採決に先立ち、日本政府代表団に同行した自民党捕鯨議員連盟のメンバーである閣僚経験者はこう語った。別の自民議員は「まさに背水の陣だ」と強調した。
今回の代表団には自民だけでなく、公明や旧民進系議員も初めて参加。農林水産省と外務省から随行する職員も倍増した。
安倍晋三首相や二階俊博幹事長が捕鯨推進派であることに加え、日本政府代表の森下丈二東京海洋大教授が日本人として半世紀ぶりに総会議長を務めることも、
「捕鯨再開の最後の機会だ」(水産庁幹部)と受け止められ、関係者の期待と不安が交錯した。
日本は今回、捕鯨再開と併せて、反捕鯨国が関心を寄せる禁漁区の設定など「重要事項」に関する決定のハードルを、
現行の「4分の3の賛成」から一定の条件付きで「過半数の賛成」に下げる仕組みも提案。反捕鯨国の反発を和らげることに腐心した。
IWC加盟全89カ国のうち、捕鯨支持国は41カ国、反捕鯨国は48カ国。捕鯨支持国ですら「それでは反捕鯨国の提案が次々通り非常に危険」(北アフリカの代表団)と懸念を示した。これは反捕鯨国と捕鯨支持国が鋭く対立し、議論が進まないIWCのこう着状態を打破するための苦肉の策だった。
一方、反捕鯨国にとっては、1982年以来の商業捕鯨のモラトリアム(一時停止)を続けることが最重要課題。
各国は「商業捕鯨の再開はあり得ない」(ニュージーランド)と猛反発した。科学的データに基づき、個体数が増えた鯨類の捕獲を容認するよう求める日本と、そもそも捕鯨自体を認めない欧米などの溝が埋まることはなかった。
◇クジラか東京五輪か
採決終了後、谷合正明農林水産副大臣は「あらゆる選択肢を精査せざるを得ない」とIWC脱退の可能性をにじませた。自民議員も「これでは国民の理解を得られない」「脱退も当然選択肢」と憤った。
しかし、IWC脱退は現実的な選択肢とは言いがたい。日本が個体数の把握などを目的に南極海で行っている調査捕鯨はIWC加盟が実施の条件。IWCを抜け、国際ルールを無視して続ければ世界から猛バッシングを受けるのは確実だ。
日本政府にとって、2020年の東京五輪を目前に控える中で国際世論を敵に回すわけにはいかない。日本政府代表団は07年に米国アンカレジで開かれたIWC総会でも、脱退を含めて対応を検討する方針を示したことがある。
それだけに、日本提案の否決直後に飛び出した今回の脱退論は、商業捕鯨再開を求める与野党や漁業関係者らの「ガス抜き」にすぎないとの見方が浮上している。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180922-00000031-jij-bus_all
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