ソフトバンクのサブブランドとして格安スマホ市場でシェアトップを独走する「ワイモバイル」が9月から各料金プランのデータ容量を改定。容量を倍増します。その戦略のウラにあるものは。ケータイジャーナリストの石野純也さんがリポートします。【毎日新聞経済プレミア】
◇キャンペーンでさらに増量
ワイモバイルの新プランは、これまで1ギガバイト(GB)だった「スマホプランS」は2GBに増量。3GBの「スマホプランM」は6GBに、7GBだった「スマホプランL」は14GBに、それぞれ2倍となる。
料金は据え置きで、最安の「スマホプランS」は1年間月1980円。2年目からは1000円上がり2980円になる。スマホプランMは1年間2980円で2年目からは3980円。スマホプランLは1年間3980円で2年目以降4980円になる。
家族で持つ場合は、光回線を契約すると、2回線目から1回線500円が割引になり、最低利用料は1480円となる。
容量を倍増させたのと同時に、キャンペーンで2年間、データ容量をさらに増量させる。スマホプランSは1GBプラスして合計3GB、スマホプランMは合計9GB、スマホプランLは合計21GB。この増量は新規契約や機種変更すると適用される。
これまでワイモバイルは、2年間限定で容量を倍増させていたが、これを恒久化し、キャンペーンでさらに容量を増やしたというわけだ。
背景には、利用者の使うデータ容量が年々増していることがある。ソフトバンクによると、ワイモバイルが始動した4年前に比べ、利用量は平均1.7倍に拡大しているという。
この数字を基に今回倍増させた。利用者にとって使い勝手がよくなる改善といえるだろう。一方で、ソフトバンクには、利用者がより安いプランに変えることで、収益性が低下してしまうリスクがある。
特に、大容量のスマホプランLは、メインブランドのソフトバンクの料金プランとも食い合いになりかねない。ソフトバンクの大容量プランは50GBと容量はさらに大きいが、ここまで大きいと、スマホだけで使い切るのが難しく、
最大で21GBになるワイモバイルのスマホプランLとの差が見いだしづらい。ソフトバンク側は一部制約をつけつつ容量無制限にしてしまうなど、何らかの対策が必要になりそうだ。
◇通信速度低下がないのが強み
ワイモバイルの容量改定は、他の格安スマホ事業者にとっても脅威になりそうだ。大手通信事業者から回線を借りるMVNO(仮想移動体通信事業者)の場合、標準的な料金プランが3GBで1600円前後。
価格だけを見るとワイモバイルの1年目よりも安いが、音声通話の定額プランをつけると、さらに数百円値段が上がり、ワイモバイルの1年目の価格を上回ってしまう。
また、ソフトバンクの回線をそのまま使うワイモバイルとは異なり、MVNOは大手通信事業者から回線を帯域単位で借りているため、時間帯によっては通信速度が遅くなることがある。
ワイモバイルに比べると店舗が少ないのも、不利な点だ。対抗策として、さらなる値下げに走る格安スマホ事業者が出てきても不思議ではない。
◇「かんたんスマホ」も発売
容量の改定に加え、ワイモバイルは新たに「かんたんスマホ」も発売する。かんたんスマホは、60代以上のシニア世代に向けた端末で、見やすい画面や大きなキーが特徴になる。シニア世代はワイモバイルの利用者の2割弱で、まだ増やしていける余地がある。
この端末限定で、1回10分までと時間に制約のあった音声通話の定額を撤廃し、電話への需要が高いシニア世代の囲い込みを狙う。
カルチュア・コンビニエンス・クラブ傘下のトーンモバイルなど、一部の格安スマホ事業者はシニア世代に特化したサービスを用意しているが、全体で見るとまだまだ少数派。他の格安スマホ事業者との差別化を図るにも、うってつけの端末といえそうだ。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180811-00000014-mai-bus_all
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