米中の貿易戦争が広がっていることは、紛争の行司役である世界貿易機関(WTO)の無力さを際立たせている。
トランプ米政権は、WTOの中国に対する対応が甘いため、有効な通商ルールを確立できなかったと不満を募らせており、WTO離脱も辞さない姿勢だ。WTO改革への機運はあるものの、具体化への動きは鈍い。
「米中の対立が終わるとは思えない。両国には多くの『弾薬』があり、対立は関税から貿易全体へと拡大していく可能性がある」。
WTOのアゼベド事務局長は19日、ブラジル南東部リオデジャネイロで開かれたイベントで、無力感をにじませた。ロイター通信が伝えた。
WTOの「機能不全」は今に始まったことではない。2001年に加入した中国が市場をゆがめる行為を繰り返してきたのに、対応は不十分だった。
例えば中国が進出企業に求めている「技術移転の強要」だ。中国は自国市場への参入を認める代わりに、技術を教えるよう求めるケースが多い。
WTOは移転強要を禁じているが、中国政府は規定を明文化せず、あくまで企業側の「自主的な協力」として行わせるため、規制できていない。
中国企業に対する補助金の支出問題も深刻だ。WTOは補助金を禁止、または事務局への通知を求めている。
しかし、中国政府は「補助金を出しているのは地方政府なので把握していない」と放置。鉄鋼企業などに補助金を出し続け、世界的な「鉄余り」を生んだ。
WTOには裁判形式で加盟国の紛争を仲裁する「紛争解決手続き」がある。米国は不公正な貿易慣行の是正を求めて中国を提訴しているが、
米情報技術・イノベーション財団のステファン・エゼル副会長は「(証拠をそろえにくく)裁判で米国が勝てるかどうかはリスクがある」とみる。
結論が出るまで数年かかるとの指摘もある。トランプ氏はWTOに不満を募らせ「WTO無視」に傾いている。
日本や欧州連合(EU)は「対中国包囲網」という点では米国と利害が一致している。日米欧は25日、ニューヨークで貿易担当相会合を開催し、中国を念頭に、より厳格化したルールを適用するなどWTO改革を検討する予定だ。
だが米国も、輸入制限や制裁関税などルール無視ともいえる措置を取っており、改革の方向性で一致できるかは分からない。【和田憲二、ニューヨーク清水憲司】
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180924-00000054-mai-bus_all
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