今大会から導入されたVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が波紋を呼んでいる。
FIFAは、かつての「神の手」のような試合の勝敗を左右する重大な誤審を防止する目的で導入した。正確な判断をする上で役立っているとの肯定的な意見がある一方で、試合が中断したり、リズムが崩れるといった批判的な声もある。
「サッカーは、ときに起こる誤審も含めて人間くささに面白みがある。厳格にやろうとすることでそれがそがれてしまう。審判は機械でいいということになってしまう」
とは、スポーツライターの平野史氏だ。
中でも、識者やファンのみならず、現場からも非難の声が上がっているのが「不可解な判定」だ。
25日に行われたイラン―ポルトガル戦。後半6分にC・ロナウドがペナルティーエリア内で倒された。一度はノーファウルと判断されたが、VARから無線で申告され、主審が映像を確認。判定がファウルに覆り、ポルトガルのPKとなった。
その後もC・ロナウドが相手DFに食らわせた肘打ちもVAR検証の結果、イエローカードと判定。かつてポルトガルを指揮していたイランのケイロス監督が「ルール上、肘打ちはレッドカードだ。試合は人々のためのもの。舞台裏にいる数人のためのものではない。試合をVARに委ねることはやめなければならない」と痛烈な批判を浴びせた。
翌26日のナイジェリア―アルゼンチン戦でも不可解な判定があった。
後半10分、ナイジェリアのクロスにアルゼンチンのDFロホがヘディングをした際、ボールが明らかに腕に当たった。VARの映像でもハッキリと捉えていたが、主審は「故意のハンドではない」とジャッジしたのだ。
ナイジェリアのMFミケルは試合後、なぜハンドではないのかと主審に詰め寄り、「審判は腕に当たったことは『イエス』と答えたが、『なぜPKでないのか』という問いには『分からない』と言った」と明かした。
さらには試合中に流血していたアルゼンチンDFマスケラーノもそのままプレーさせた。ルール上、ピッチを出て、止血しなければいけないのにもかかわらずだ。
25日のスペイン―モロッコ戦でも、スペイン有利と思わせる判定があった。
「VARが導入されても、審判はこれを無視することができ、結果的には審判の判断に委ねられる。審判は、一方のチームに厳しいジャッジを下した後、もう一方のチームにいわゆる『お返し』をするなどして、試合の中でバランスを取ることもあります」
とは、前出の平野氏。
公平性を期すために導入しながら、バランスにも配慮することでより不可解さが際立っているとしたら皮肉だ。人気国を勝たせるために、VARを悪用しているのではないか、との声が出るのも仕方がない。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180701-00000010-nkgendai-socc
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