◇第100回全国高校野球選手権記念大会第14日・準々決勝 金足農3―2近江(2018年8月18日 甲子園)驚異の青信号が近江ブルーをひざまずかせた。金足農(秋田)の三塁ベースコーチ・船木は言った。「腕なんか回してない。僕を見てもいなかった。止まる気がなかった」。二塁走者の菊地彪だ。50メートル6秒フラットのチーム一の俊足が、跳んだ――。
1点を追う9回。前日に強豪・横浜を8回の逆転3ランで破ったナインだ。諦めることなど知らない。高橋と菊地彪が連打。菊地亮は四球を選んだ。無死満塁。中泉一豊監督と打席に向かう斎藤の思いは一致した。
「まず同点」
カウント1―1になり、出たサインはお家芸のスクイズ。三塁手にうまく捕らせた斎藤は「よし。点が入った」と喜び、そして驚いた。「まさか来るとは…」。高橋に続き、菊地彪も本塁目掛けて駆けていた。
三塁手の送球を受けた一塁・北村からのバックホーム。捕手のタッチを避けて滑った。「2ランスクイズのサインはない。あの子の判断」(中泉監督)。大会史上初、サヨナラ2ランスクイズ成功に甲子園の興奮がはじけた。
「三塁に転がったら行くんだ、と思っていた。信念があった。練習してきたので」
春から菊地彪は独自に、スクイズで二塁から本塁を突く練習を重ねた。秋田から一切交代なしの9人野球。各自が己の役割、そのための準備を分かっている。斎藤だってそう。「自分は人より20~30分は多くバントをやる。
10種類の場面を考えて。スクイズは走者三塁と、満塁」。投手が捕れば本塁封殺の確率が高まる、制約の多い状況で見事に決めた。
チームは毎日行うバント練習に加え、週2、3度は「一発バント」と呼ぶメニューに挑む。1球で決められなければダッシュ、ヘッドスライディングを往復する罰ゲーム。鍛えたスクイズで、この日の全得点を挙げた。
斎藤は今大会、9打数無安打にして3打点。2度目のスクイズ成功だった。打席に向かう前、吉田にベンチで言われた。「このチャンスのために神様はノーヒットにしてたんだよ」。笑うしかない。「バカヤロー」。笑顔のもとに幸福は舞い降りた。(和田 裕司)
≪95年にも≫金足農は過去にも甲子園で2ランスクイズを決めている。95年8月9日の1回戦・倉吉東戦で9―4とリードした9回1死二、三塁から2番・佐々木将が一塁線へゴロを転がし、三走・松橋に続き二走・佐藤慶もホームに生還、ダメ押しの2点を加えた。
引用元:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180819-00000062-spnannex-base
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