ここ数年SNSで頻繁に見かけるようになった言葉があります。それが「エモい」。懐かしい雰囲気のある写真にInstagramで「#エモい」と付けて投稿したり、大好きなアーティストのライブが終わって「あの曲めっちゃエモい……」と感想をツイートしたりと、幅広く使われている言葉です2016年には三省堂の「今年の新語」で2位にランクインし話題になりましたが、今でも消えることなく積極的に使われ続けています。
しかし、現代日本語を研究する言葉のプロに言わせると、「エモい」のような形容詞の多くは、これまで定着せずに消えていくことがほとんどだったそう。それにも関わらず、なぜ「エモい」は若者たちの間で頻繁に使われているのでしょうか。現代日本語の文法や語彙(ごい)を研究している熊本大学の茂木俊伸准教授に伺いました。
茂木俊伸
熊本大学大学院 人文社会科学研究部 准教授。専門分野は日本語学(現代日本語の文法、語彙)。「ことば研究館」の「ことばの疑問」で解説を担当した「若者ことばの『やばみ』や『うれしみ』の『み』はどこから来ているものですか」はTwitterやFacebookなどのSNSでも話題を集めた。
(Twitter:@tmogi_nichibun)そもそも「エモい」とは?
熊本大学の茂木です。私の楽しみは、日常生活のどんなところからでも日本語の不思議を探して分析すること。SNSで使われるネット用語や若者言葉もそうした“気になる日本語”の一つです。今回は英語の「emotion(al)」――「感情(的な)」から作られたと考えられる、外来語の形容詞「エモい」についてお話しします。
「エモい」という言葉の意味について「今年の新語2016」の選評では「感動・寂しさ・懐かしさなど、漠然としたいろいろな感情表現」に使われると解説しています。感動や感激を表す言葉として既に「やばい」という言葉が定着していますが、「エモい」が好んで使われるのには、2つ理由があるようです。
一つには、「やばい」との「意味的な守備範囲の違い」が考えられます。例えば、ある店で食べたラーメンは「やばい」けれど、ふと目に入った風景は「エモい」というように。
「やばい」が直接的な刺激に対する興奮を表すのに対し、「エモい」はモノから喚起されるさまざまな感情を表し、特に懐かしさや切なさのような、より静かな心の揺れ動きまでを広くカバーしているように感じられます。
もう一つの理由は「分かりにくさ」です。「エモい」はもともと音楽業界で使われていたとされますが、「エモ」の部分の元の語が「emotion(al)」だったとは想像しにくく、分かる人にとっては意味を分かって使えることの楽しさや優越感が、分からない人にとっても不思議さや面白さが感じられるのではないでしょうか。
Twitterでも「チルい」(英語の「chill」+い)、「メタい」(英語の「meta-」+い)といった外来語形容詞が普通に使われているように、専門的な言葉から生まれた言葉も、今はちょっとしたきっかけで広まりやすくなっていると思われます。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180715-00000006-zdn_n-sci
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