「あのハチワレ、保護してうちで飼おうと思うんだ」
ある日の夕食時、私はツレアイに切り出した。彼もハチワレの存在は知っており、2人でアパートの前を通る際には、一緒に撫でたりしてかわいがっていた。
「はあ?何を言ってんの、そんなの無理だよ」
耳を疑った。まさか頭ごなしに否定されるとは思っていなかったからだ。
「え、だって、野良猫は飼ってあげたほうがいいって、前に言ってたじゃない」
「そうだけど、それは飼える環境にある人がすることで、うちでは無理だよ」
「でも、“にゃーにゃ”のときは、飼ってあげればって言ったよね」
「まさか本当に飼うって言い出すとは思わなかったから」少し腹が立った。ブティックで新作のバッグを買おうかどうしようか迷っている友人に「買っちゃえば」と言うような、無責任な後押しと同じレベルだ。
彼が反対する理由はこうだった。
一軒家ならまだしも、外にいた猫が狭いマンションに閉じ込められるのは不憫だ。外と家とを自由に行き来できないのは多大なストレスに違いない。また、猫は日当たりのよい縁側などを好むが、うちには日中さんさんと日が差し込む南向きの窓がない。
さらに、高いところが好きな猫は、クローゼットや本棚にのぼって物を落とす危険もある。ソファーで爪を研ぐだろうし、カーテンは破るし、家が荒れる。飼育費や、病気になったときの治療費の問題。また出張や旅行の際はどうするのか。
そして、猫はいつか死ぬ。彼は子供の頃、飼っていた猫が病気で亡くなったとき、ひどくかわいそうな様子で、それが今も忘れられないそうだ。あのような姿を見るのは二度と嫌だと言う。
しかし、自分の中に根を張ってしまった「ハチワレを保護する」という決意は、ちょっと反対されたぐらいでは揺らがなかった。
私は「どうしても飼う」と泣きわめいた。しかし、それだけではあまりにも大人気ない。そこでツレアイを説得するための材料を集めることにした。
まずは日当たりの問題である。インターネットで検索し、東京都動物愛護相談センターの飼育相談係に電話をかけた。
「家に日中、日が差し込む南向きの窓がないのですが、猫は飼えますか」とたずねると、「太陽光がまったく入らない家に住んでいるのですか?」と怪訝な声。午前中はたっぷり日光が入ることを話すと「でしたら問題はありません。それより、猫が好きな上下移動ができる環境をつくることのほうが大切です」とアドバイスされた。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180722-00010000-sippo-life
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