「妊婦は邪魔」 職場環境劣悪、第2子も死産妊娠をきっかけに仕事を辞める女性たちがいる。妊娠中の過重な働き方で、体調を崩したり、胎児が危険にさらされたりしたことが理由だ。子どもを産む手前で、仕事との両立を断念する女性たち。当事者に事情を聞いた。
「シフトを急に変えるのは難しい。亡くなった子どもを取り出す処置は、次の休みに受けて」
関東地方に住む20代の看護師は昨年春、上司の言葉に耳を疑った。勤務の間をぬって受けた妊婦健診で胎児の心音が止まっていると告げられ、慌てて職場に連絡した時のことだった。
職場の人員はぎりぎり。みな目が回るほどの忙しさだった。結局、女性はその後数日間、亡くなった子どもをおなかに残したまま、いつもと同じように出勤し、残業も夜勤もした。「心が壊れそうだった」
こうした職場の対応について、母子愛育会総合母子保健センター(東京)の中林正雄所長は「医学的には、妊娠初期であれば、すぐに処置しなくても、特に母体に問題はない。だが、状況によっては、母体に影響が出る可能性もある」と話す。
また、首都圏のあるベテラン助産師は、「子どもを失ったショックは計り知れない。仕事ができる状況ではなく、精神的なケアを優先すべきだ」と疑問視する。
女性はその数か月後、第2子を妊娠した。前回の反省から、上司に強く要望し、夜勤は免除された。だが、同僚からは「妊婦は邪魔」とまで言われ、「気が休まらなかった」。第2子は妊娠5か月で死産。検査を受けても、母体などに異常はなく、職場環境が原因としか思えなくなった。
「仕事に誇りを持っていた。無事出産できたら、恩返しと思って働く覚悟だった。でも、限界だった」
職場に絶望、退職も
亡くなった子をおなかに残したまま働く――。こうしたケースは皆無とは言い難いようだ。首都圏の女性教員(42)は、30代同僚の働き方をみて、昨年度末に退職した。
同僚は、出血が続いていたのに休みが取れず、そのうちに胎児がおなかの中で亡くなった。しかし、人手が足りず、亡くなった胎児の処置をせずに出勤。泣きながら働いていた。「こんな状況の人が休めない職場に未来はない」。女性はそう思ったという。
「流産で大量出血したうえに、手術もした。でも、上司に『繁忙期だから』と言われ、すぐに復職させられた」「夜勤中に出血したが、職場を抜けるわけにはいかず、朝まで泣きながら勤務した」など、退職を考えてしまうような職場環境を訴える妊婦の声は後を絶たない。
職場への迷惑を考えて、辞めた人もいる。
金融機関に勤めていた都内の女性(41)は2015年、妊娠7か月で退職した。休日出勤や残業を重ねた末に切迫流産で入院したためだ。「職場や家族にこれ以上、心配をかけられないと思った」と話す。退職後、無事出産した。その後、人手不足の職場からは、「また働いてくれないか」と打診があった。「仕事は好きだったので、うれしかった」と振り返る。
だが、2人目を考えていることもあって、踏み切れないでいる。「妊娠したら、また職場に迷惑をかけてしまうと思って」働く妊婦の相談に乗っているNPO法人「マタニティハラスメント対策ネットワーク」代表理事の宮下浩子さんは、「妊婦の体調は個人差が大きい。それなのに、みな同じだと勘違いをされて、無理を強いられ、追いつめられて退職する妊婦は多い。誰がいつ抜けても回る職場作り、働き方改革が必要」と話している。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180730-00010000-otekomachi-life
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