突如消えた住人は、まさかの刑務所の中。こんなことになった場合、部屋の家賃や荷物はどうなるのでしょうか。弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、「部屋を出ていってもらう事は可能でしょうか」と家主からの切実な相談が寄せられました。
この相談者のほかにも、ネット上には刑務所に収容された住人に保証人や親族がいないため、どうすれば分からず、途方に暮れている家主の声があがっています。
部屋を明け渡し、家賃を支払ってもらうには、どのような手続きをすればよいのでしょうか。高橋辰三弁護士に聞きました。
●まずはどの刑務所に収容されたのかを調べる
「まず、住人(賃借人)が刑務所に収容された場合、賃借人がどこの刑務所に収容されたのかを調べる必要があります」
どうやって調べたらいいのでしょうか。
「賃貸人(家主など)は、家族、連帯保証人等、賃借人に近い人物に相談し、収容先を聞いてみるとよいでしょう。
そのような手段を尽くしても賃借人と連絡を取ることができず、明け渡しを求める場合には、弁護士に依頼し、法務省矯正局宛に弁護士会照会という手続をすることで、刑務所名と収容年月日を調べることができます」
●勝手に荷物を処理することは許されない
その後のプロセスはどうなりますか。
「賃借人の収容先が判明したら、通知書を送付して賃貸借契約を解除します。収容中の賃借人が親族などに頼んで任意に部屋を明け渡してくれるのであれば話は楽ですが、そのようなことが出来ない場合は、建物明渡と未払い賃料の支払を求める訴訟を提起し、判決を得てから明渡しの強制執行手続をとる必要があります。
強制執行の際の部屋の荷物の処分は、裁判所の執行官を通じて行うことになりますが、この手続きによらずに賃貸人が勝手に荷物を処分することは許されません。
建物内に残された家財は、遺留品として、明渡強制執行の日(断行日と言います)に執行官が倉庫に一定期間保管をし、賃借人に引き取りを催告します(書面が刑務所内の賃借人に送達されます)。賃借人側で引き取りがされない場合には、保管された遺留品を競売により売却することになります(通常は賃貸人が買い取る方法で処分がされます)。
なお、保証人でない賃借人の親族は、賃貸人との賃貸借契約の当事者ではありませんので、解除の意思表示の相手方にはなりませんし、また、滞納家賃の支払いに応じる法的義務はありません」
【取材協力弁護士】
高橋 辰三(たかはし・たつぞう)弁護士
東京都世田谷区において、町医者のような法律事務所を目指し2010年にアジアンタム法律事務所を開所し、民事事件、家事事件、刑事事件などを取り扱っている。弁護士会や地域ボランティア団体などでの公益活動に携わりながら、仕事をしている。
事務所名:アジアンタム法律事務所
事務所URL:http://www.adiantum.jp/弁護士ドットコムニュース編集部
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180715-00008180-bengocom-life
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