イベントや災害時などに配布されるペットボトルの水をめぐり、あちらこちらで“賞味期限切れ問題”が起きている。配った後で賞味期限が過ぎていることに気づき、慌てて回収、廃棄する騒ぎだ。しかし、期限を過ぎたペットボトルの水は、安全性に問題が生じるのだろうか…?
■期限切れならどうする
東京都は平成27年9月、立川市と合同で実施した防災訓練で賞味期限切れの水を配布したとし、飲まずに処分するよう呼びかけた。
今年6月1日には三重県伊賀市が、5月に開催したマラソン大会で賞味期限切れのペットボトル(500ミリリットル)の水を配布したと発表した。地元の伊勢新聞によると、同市は「今後は(水の)賞味期限が残っていても大会後には廃棄するなど、管理を徹底したい」という。
6月18日に発生した大阪北部地震で、長時間停車した湖西線の乗客に配布した飲料水が賞味期限切れだったことが判明し、JR西日本は水を回収、廃棄した。
こうした事例があると、インターネットでは必ず疑問の声があがる。伊賀市の方針に「水を捨てるのはもったいない」という批判もあった。
ただ、同課に確認すると「『廃棄する』とは言っていない」と、記事にあるコメントの内容を否定した。記事を書いた伊勢新聞の記者は「『水をどうするのか』と聞いたら『捨てます』と。残った水を保管しておくと、また同様のことが起きるからとの説明だった」と断言する。
しかし、こうした事例をめぐるネット上の意見で常に気になるのは、「賞味期限だから(過ぎていても)大丈夫」だ。
賞味期限は、過ぎても問題ないのか?
■何年たっても腐らない
加工食品には、「消費期限」または「賞味期限」のどちらかを表示する義務がある。
消費期限は「安全に食べられる期限」のことで、これを過ぎると腐敗など安全性を欠くおそれがあるので食べない方がいい。
一方、賞味期限は「おいしく食べることができる期限」のことで、これを過ぎたからといって安全上の問題があるわけではない。
さて、ペットボトルの水。賞味期限の方だ。
食品コンサルタントの冨岡伸一さんは「ペットボトルの水は、ほとんどが加熱や濾過(ろか)によって雑菌などを取り除いている。雑菌がない水は何年たっても腐らない。適正に保存され未開封の状態ならば、賞味期限をかなり過ぎたものでも安全性に問題ありません」と話す。
中には殺菌処理をしていない水もあって、容器に「殺(除)菌していません」と書いてある。これは、期限が過ぎると雑菌が増えるなどして飲めない場合もあるが、たいていのペットボトルの水は雑菌が取り除かれ、「何年たっても腐らない」。
だから、ペットボトルの水は、賞味期限を過ぎていても健康上問題なく飲めるのだ。
■もう一つの意味
ペットボトルの水が「何年たっても腐らない」なら、いっそ賞味期限を「無期限」にしてはどうか。
「いや、水の賞味期限は、表示された容量が確保できる期限です」
こう話すのは日本ミネラルウォーター協会の渡辺健介事務局長だ。
食品は、食品事業者が科学的・合理的な根拠に基づいて賞味期限を設定している。一方、計量法の規定に基づいて内容量を表示する決まりもある。
ペットボトルの容器は、通気性がある。すると、水が少しずつ蒸発する。つまり、時間の経過とともに減るのだが、表示と実際の容量が許容の誤差を超えた商品を「販売する」と計量法違反になる。
ペットボトルの水の賞味期限は、もっぱら表示と実際の容量の誤差が許容範囲内にある期間、すなわち計量法違反にならない限度を示しているのだ。
なお、その水を「譲渡する」のは計量法に反しないし、飲むのも問題ない。備蓄しておいた水が減っても、計量法とは無関係だ。
渡辺事務局長は「東日本大震災以降、水の備蓄が増えたが、その分廃棄も増えている」と指摘する。
「ペットボトルの水は手洗いや食器洗いにも使える。安全でも期限切れの水を飲むのは嫌だという気持ちが働くなら、廃棄するのではなく別の用途で使うといいでしょう」(文化部 平沢裕子)
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180704-00000501-san-life
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