高齢者の中には「第二の人生」を歩む時のパートナーとして、ペットを飼いたいと考える人も多いようだ。しかし、実際には自らの病気やけがなどでペットを飼うことがままならなくなり、介護の関係者に負担をかけたり、近隣の人たちに迷惑をかけたりするケースも出てきている。
ペット業界に詳しいジャーナリストの阪根美果さんに、高齢者とペットを巡る現状と、高齢者とペットが幸せに暮らすための心がけなどについて解説してもらった。
◆70代の犬飼育意向「横ばい」◆
政府の統計によると、日本の総人口に占める65歳以上の割合は、昨年12月1日現在で27.8%と、総人口の3割に迫っています。
この割合は主な先進国の中でも最も高く、日本は世界一の「高齢化大国」といえます。平均寿命も延びており、今後も高齢者の割合、人口ともにますます増えると予測されています。
高齢者がペットを飼うことは心身の健康維持につながり、認知症予防にも効果があると言われています。ペットフードメーカーなどでつくるペットフード協会は、2017年度の「全国犬猫飼育実態調査」で、犬についてのみ年代別に飼育したいかどうかの意向を調べました。
調査によると、20~60代では飼育率、飼育意向ともに年々減少しているのに対し、70代は双方とも「維持」(横ばい)でした。同協会は「70代は他の年代よりも犬を飼うための金銭的、時間的余裕があることがうかがえる」としています。
子供たちが独立し、退職した後の「第二の人生」を前に、ペットを新たな家族として迎えたいと思う人は少なくないのではないでしょうか。特に独り暮らしの高齢者にとっては、ペットが心の支えにもなります。
しかし、高齢者が安易にペットを飼ってしまうことによって様々な問題が起きる恐れがあるのです。高齢者とペットの「共存」をどのように考えるべきなのでしょうか。
介護現場で起こっている問題
◆ペットの世話が大変……預け先もない◆東京都新宿区の若松町高齢者総合相談センターの窓口には、日々ペットに関する様々な相談が寄せられるそうです。特に多いのは、
「自分の体力が落ちてきたため、世話をするのがおっくうになってきた」
「検査入院が必要だと医師から言われているが、ペットがいるから入院できない」
「視力や握力が低下し、ペットの爪切りが難しくなった」
「ペットの健康に不安はあるが、動物病院へ連れていく(金銭)負担を考えると迷ってしまう」――などといった相談だそうです。
飼い主自身の健康上と経済的な理由から、ペットの世話をすることが次第に困難になっていくことがわかります。状況によっては、かなり深刻な事態に陥ることもあるといいます。
◆現場で起こっている問題とは?◆
訪問介護事業を手掛ける「ジャパンケア高田馬場」(東京)の訪問介護管理者・野澤久美子さん、ケアマネジャーの玉井依子さんは「ヘルパーが世話をできるのは介護保険の被保険者(高齢者)本人のことだけ。ペットの世話は(介護保険の適用範囲外で)法律違反になります」と説明します。
続けて「ペットの世話は高額な料金を支払って(ペットシッターなど)外部のサービスを利用することになります。経済的負担が大きいため利用する人は少なく、本人が動かない体で必死にペットの世話をしています。ヘルパーとして手を貸すことができないのが、もどかしく、とても心苦しい…」といいます。
また、同社の親会社で、介護大手「SOMPOケア」東京第4事業部の中田美紀さんも「ケアマネジャーの場合は、何度訪問しても費用は変わらない仕組みになっています。このため、ヘルパーができないことはケアマネジャーが対応するケースも多く、ここ数年、ペットに関わることが増えています」と指摘します。
ヘルパーに比べ、ケアマネジャーのほうが柔軟に動けるため、結果的にケアマネジャーにしわ寄せがいくようです。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180701-00010000-yomonline-life
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