自民党は20日午後、総裁選の投開票を行い、安倍晋三首相(63)が国会議員票329票、地方票224票、計553票を獲得し、新総裁に選出された。安倍首相は「憲法改正」などの重要課題を見据え、10月1日に内閣改造・党役員人事を断行し、秋の臨時国会は新体制で臨む方針を固めた。注目は、麻生太郎副総理兼財務相や、二階俊博自民党幹事長らの去就に加え、
「将来の首相候補」に挙げられる小泉進次郎筆頭副幹事長と、小渕優子元経産相のダブル入閣情報だ。石破茂元幹事長(61)は254票を獲得し、一定の存在感を示した。石破氏や石破派議員が要職に起用されるかが焦点となりそうだ。
「再び自民党総裁の重責を担うことになった。全身全霊を傾けて、平和で安定した日本をつくっていく。そして、いよいよ憲法改正に取り組んでいきたい。戦いは終わった。すべては国民のために、一致協力して新しい国をつくっていこう」
安倍首相は20日午後2時15分過ぎ、東京・永田町の自民党本部での総裁選で「連続3選」を果たした後、所属国会議員らにこう訴えた。
注目の選挙は、国会議員票405票と地方票405票の計810票で争われた。安倍首相は国会議員票の約82%、地方票の約55%、全体の約68%を獲得して、勝利した。
任期は、2021年9月までの3年間。通算の首相在職日数は19年11月に歴代トップの桂太郎に並び、最長政権を視野に入れる。
当面の主要課題は、憲法改正のほか、北朝鮮の非核化や、日本人拉致被害者の奪還、日米貿易協議、ロシアとの平和条約締結などだ。来年は皇位継承があり、統一地方選や参院選、大阪でのG20サミット(20カ国・地域首脳会議)も控える。
こうした課題に取り組むため、安倍首相は10月1日に内閣改造・自民党役員人事を行う方針。
まず、政権基盤を盤石にするうえで、「屋台骨」である麻生氏の存在は不可欠だ。財務相留任とみられるが、決裁文書改竄(かいざん)問題などの責任を取って、財務相は辞め、「副総理・無任所相」として閣内に残るとの見方もある。
12年末の第2次安倍政権発足後、「大番頭」として切り盛りする菅義偉官房長官は留任するとみられる。山積する外交課題を考えれば、「ポスト安倍」候補に数えられる河野太郎外相も留任濃厚か。
党執行部では、二階氏の処遇が焦点となる。来年の大型選挙をにらみ、続投が有力視されるが、識者はどう見るか。
政治評論家の小林吉弥氏は「二階氏にとって(総裁選と、30日投開票の沖縄県知事選は)正念場だ」と述べ、続けた。
「総裁選の結果は、今後の政局を左右する沖縄県知事選に影響し、ひいては内閣支持率に直結する。『党内民意』といえる地方票の大半を安倍首相側に取り込み、知事選勝利につなげることは、二階氏の責任でもある」
続投は選挙結果次第のようだ。
内閣改造人事の目玉となりそうなのは、進次郎氏だ。
12年総裁選では石破氏を支持し、「モリカケ」問題では石破氏と同様、安倍政権を批判してきた。今回も「健全な批判勢力が必要だ」と周囲に語っており、石破氏に投票したとみられる。一方、沖縄県知事選では与党系候補の支援を精力的に行っている。
政治評論家の伊藤達美氏は「総理総裁を目指すなら、『登竜門』といわれる官房副長官に就き、権力の内側を勉強してキャリアを積んだ方がいい」と語る。
ただ、小林氏は「官房副長官は、閣僚も知らない機密情報に触れる。モリカケ問題で見せた政権との距離を考えると、安倍首相が起用するかは疑問だ。国民の関心を引きつけるため、進次郎氏を閣僚に抜擢(ばってき)する可能性も、なくはない」と述べた。
その場合、農林部会長を務めた進次郎氏には、農水相が適任か。
進次郎氏と同様に、元首相を父に持つ2世議員の小渕氏も、その処遇が注目される。
小渕氏は08年に少子化担当相として、戦後最年少の34歳9カ月で初入閣し、14年に経産相に起用されたが、関連する政治団体の政治資金規正法違反事件が発覚し、辞任に追い込まれた。
4年が経過し“復活”への環境は整いつつある。同事件で有罪が確定した元秘書の執行猶予は10月にも終わる。4月に所属派閥の領袖が、かつての「竹下派」を彷彿(ほうふつ)させる竹下亘総務会長に替わったのも、小渕氏を「将来の首相候補」として推す布石とされる。
小林氏は「小渕氏はアクが強くて嫌われるようなタイプではなく、注目の女性閣僚になり得る。代替わりの時機をうかがう竹下氏も、閣僚候補に推薦するのではないか」とみる。
情報公開請求の漏洩(ろうえい)問題が発覚した野田聖子総務相に代わって、総務相起用説もある。
一方で、“冷遇”を余儀なくされる人も出てきそうだ。
竹下派は「一致結束」が伝統だったが、今回、派内の支持候補を衆参で一本化できなかった。
前出の伊藤氏は、竹下氏について「安倍首相に引き立てられ、復興相、国対委員長、総務会長を歴任したが、総裁選対応でつまずいた。続投は望めないだろう」と指摘する。
現職総裁との一騎打ちに挑んだ石破氏は、選挙戦で、野党顔負けの政権批判を繰り返しただけに無役の公算が大きい。
さらに、石破派唯一の閣僚である斎藤健農水相が、安倍首相を支持する国会議員から「石破氏を応援するなら辞表を書け!」と圧力を受けたと主張した余波は大きい。「反安倍」の左派メディアに格好の攻撃材料を与え、今後の大型選挙にも影響しかねない。
伊藤氏は「斎藤氏は閣外に出るだろう。ただ、安倍首相が『適材適所』の方針を掲げるなら、露骨な『論功行賞』は避けて、石破派から答弁能力のある人材を閣僚に起用すべきだ」と話した。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180921-00000006-ykf-soci
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